「連立方程式って将来役に立つの?」

 昭島市中神近隣のご父母の皆様、昭島数学館の岩井です。以前授業中に教室の中であった生徒とのやり取りを思い出しましたので、今回はそれを書いてみたいと思います。

中学2年生A君のお話「連立方程式って将来役に立つの?」

 中学2年生の数学の授業で、単元は連立方程式の利用(文章題)でした。説明がひと段落したところで、一人の男子生徒(A君)がみんなの前で「連立方程式の文章題って将来なんかの役に立つの?」と訊いてきました。この生徒は運動神経抜群で勉強もそこそこでき、周囲の友人たちの中でも中心的な存在で、くりくりした目をぱちぱちさせながら、ときに目上の人間に対して率直な鋭い事を言うような利発な子でした。

 私はちょっと考えてからこう答えました。「そうだね、試験に出るからっていう理由以外に、直接的には将来ほとんど役に立たないだろうね。僕の場合はこういう仕事をしているから連立方程式とかかわっているけど、プライベートな生活の中で連立方程式を利用するなんてことはまずないな。」するとA君は「じゃあ何でこんな役に立たないこと勉強しなきゃいけないんだ。」と言い返してきます。A君の言う事は確かに正論です。

 そこでまた少し考えてからこんな返答をした記憶があります。「直接役には立ってないけど、間接的には大いに役に立っているんだと思うよ。連立方程式に限らず、数学の様々な問題を解く、つまり、問題文を読んで解答を導き出すための的確な道筋を考え、それに従って正しい式を作って正確に計算をする。その一連の作業、特に正答を得るために最適で効率の良い方法をじっくりと考えること、それを小学生・中学生・高校生の時期に繰り返し訓練することは、将来人生においていろいろな壁にぶちあったときに、その壁を乗り越えるのに必要な思考力を養うために必要なことだと思う。」

 A君は、全部は納得していない様子でしたが「そうなんだ…」と言い、それまでより数学の勉強に対してやる気が出たようです。何のために数学を勉強するのか、という問いに対する解答は他にもいろいろとあると思いますが、生徒との話のキャッチボールをすることや疑問に答えてあげることは、わからない問題の解き方を教えること以上に大切なことだと思いました。

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